糖尿病には、インスリンの分泌量が低下するために起こるものと、分泌量は十分でも働きが低下する「インスリン抵抗性」が顕著にあらわれているものとがあります。インスリン抵抗性のために、血液中のぶどう糖が細胞内にうまく取り込まれず、血糖値を適正にコントロールできないタイプの糖尿病を「2型糖尿病」といいます。このタイプは遺伝と強くかかわりがあります。遺伝的な素因をもつ人が、肥満になったり、過剰なストレスを受けたり、運動不足になったりするとそれが原因で発病し、緩慢な経過をたどるのが一般的です。日本の40歳以上の糖尿病患者のほとんどがこの2型糖尿病です。そのため、一般的に「糖尿病」という場合は、2型糖尿病を指すことが多いようです。以前は中高年の発症者がほとんどでしたが、最近は若年層にまで及んでいます。2型糖尿病の特徴のひとつとして、「インスリンの出方が遅い」という点があります。糖尿病であるかどうかを診断するための検査のひとつに、食事をさせたり、ぶどう糖溶液を飲ませてインスリンが血液中に分泌される速度をみるものがあります。健康な人の場合、血糖値が上昇するとインスリンがすみやかに分泌されますが、2型糖尿病の人には、最初にインスリンが分泌されるまでに時間がかかるという共通点があります。糖尿病の専門医は、この点を注目しているのです。このように、2型糖尿病は、インスリンが分泌されていないわけではないので、治療としては発病の原因となる生活習慣を改善し、インスリンの働きをもとに戻すことが必要になります。遺伝的要素があっても、適切な食生活と運動習慣を続ければ、発症は防げます。
日本人は、もともと2型糖尿病にかかりやすい体質です。それは、インスリンの分泌量が欧米人に比べて約半量と少ないのに、60年代ごろより欧米型の高エネルギーの食生活に移行し、さらにコンビニなどの登場と定着によって、深夜に食事をとるなど、過食・偏食の傾向が高まっているためです。つまり、「耐糖能」のメカニズムを超えた食生活を強いるせいで、体が悲鳴をあげて、糖代謝に異常をきたすのです。しかし、2型糖尿病は、上記で述べてきたように、食事・運動療法を続けることで、インスリンの働きを回復でき、血糖値も正常域に戻ります。2型糖尿病でも、インスリン注射を行わざるをえない場合もありますが、長期間の適切な療養によって、注射や薬物治療から解放される人もいます。