糖尿病

糖尿病とお酒(アルコール)

糖尿病の療養のひとつに[禁酒]があります。しかし、適度なアルコールの摂取は、健康・長寿を促す場合もあります。糖尿病とお酒(アルコール)の関係について紹介していきます。

お酒との付き合い方

お酒との付き合い方
「酒は諸刃の剣」と言われるように、適度なアルコールの摂取は、健康・長寿を促進する場合もあります。しかし、適量を超えた飲酒を続けると、次第に体の各器官が不調をきたし、さまざまな病気を誘発します。たとえば、1日に赤ワインを1杯飲む習慣を持つ人は、アルコール摂取量ゼロの人に比べて、糖尿病の発症率が4割も低いという調査研究があります。これは赤ワインに含まれるポリフェノールが体内の活性酸素を抑えるように働いた結果と考えられますが、適量を超えた場合は、肥満となり、生活習慣病や他の疾患に侵されます。つまり、問題は適量かどうかです。糖尿病の治療では、一般に「禁酒」がすすめられますが、 条件を満たす場合 、適量であれば、飲んでもさほど問題はありません。また、糖尿病予備群の人も同様です。さらに、1週間に1~2日の休肝日をもうけるのが理想的です。

血糖コントロールにアルコールがもたらす影響

●血糖値が上がる

肝臓がアルコールを分解する過程で、肝臓にグリコーゲンとして蓄えられた糖が血液中に放たれるため、血糖値が上がります。また、長期的な過度の飲酒習慣を持つ人は、グリコヘモグロビン値が高くなり、血糖コントロールが良好に働きません。

●低血糖発作を起こす

極度の空腹時に、アルコールを飲むと、肝臓がアルコールを代謝するのに追われてしまい、体内に蓄えられた物質を糖に分解する働きが弱まるため、エネルギー源となるブドウ糖が足りず、低血糖発作を起こす危険があります。

糖尿病の治療中、お酒が許可される条件

①血糖コントロールが比較的良好である②極度の肥満状態でない③合併症が併発していない④肝機能に問題がない⑤薬物治療・インスリン治療を受けていない⑥節度を守った飲酒ができる※以上の①~⑥の条件すべてを満たすこと。

アルコールの代謝

体内に入ったアルコールは、胃で吸収されたあと、約10%が呼吸で排泄、約90%が肝臓で代謝され、最後には炭酸ガスと水になります。この過程で、脂肪酸やコレステロール、乳酸が増え、健康を脅かす要因が蓄積されます。また、過度の飲酒がつくる脂肪肝は、インスリンの働きを弱めてしまいます。

純アルコール量が成否の基準

アルコールが血糖コントロールに与える影響は、摂取する純アルコールの量で決まります。つまり、一部で言われているような、「ビールや日本酒はダメだが、焼酎やウイスキーは多めに飲んでも大丈夫」ということはありません。ただし、ポリフェノールの含有量においては赤ワインと麦芽100%ビールが秀でているので、ほかのお酒に比べ、血糖コントロールを良好に保ちやすくなります。ビール風発泡酒にはこの効果はありません。

お酒はカロリーのみ

アルコールは1g7kcalが目安ですが、エネルギーがあるだけで、主要な栄養素をほとんど含んでいません。よって、過度の飲酒と偏食を続けていると、短期間で肥満や栄養失調となります。

血糖コントロールとアルコール

飲酒量

血糖コントロールを良好に行うための1日の飲酒量

以下は、1種類を飲む場合の1日の総量です。
●ピール(5%)⇒中ビン1本(500ml)
●日本酒(12~14%)⇒1合
●ワイン(11~14%)⇒グラス1.5杯
●焼酎(20~25%)⇒0.6合
●ウイスキー(40~43%)⇒50ml
※( )内はアルコールの標準濃度です。
お酒の摂取量×標準濃度×0.8=エタノール量
1日のエタノール量摂取は30g以下に抑えるのが賢明です。計算式の0.8はアルコール比重です。

休肝日

休肝日のパターン

糖尿病予備群:休肝日、週1~2回。2回の場合は、3日飲酒+1日休むペースで。
糖尿病初期:休肝日、週2回。5日飲酒+2日連続休むペースで。
糖尿病が進行:休肝日、週3回。2日飲酒+1日休むペースで。
ただし、右ページ下の条件を満たしているときのみ飲酒可)
●軽く何かを食べてから、お酒に移りましょう。飲食店では、まず飲み物のオーダーがとられ、先にお酒を飲んでから食べ物をとるのがほとんどですが、空腹時にお酒を流し込むのが、最も肝臓を痛めます。
●つまみは、高カロリー・高脂肪食はひかえましょう。野菜、大豆製品、海藻類、酢の物を中心に食べましょう。
●家で飲むことが多い人は、お酒の買い置きをやめます。
●上記の「1日の飲酒量」の目安を超えた場合は、翌日の食事にいっそう気を配りましょう。翌朝は、抗酸化作用の強い野菜や果物(赤や緑色の野菜・果物)の生ジュースなどをとり、昼食も野菜中心の低カロリー食とします。